コーヒーの木 −男のロマン
コーヒーの木からコーヒー豆ができるまでをご存知ですか。おおまかですがざっとたどりますと、まず、成長した木に白いかれんな花が咲きます。花のあとに緑の小さな丸い豆をつけます。太陽の光を受けてそれがやがて赤く熟します。その豆を獲って皮を剥き、中に入っている種(これがコーヒー豆)を取り出して天日でしばらく干すと、それがコーヒーの生豆になります。
家庭ではそれを厚手の鍋で気長に炒って(←焙煎)いい香りがしてきたら、コーヒー豆の出来上がりです。
あとはコーヒーミルで好みの粗さに挽いて、サイフォン・ネル・ペーパーなどお好みの方法でドリップする。ざっとですがこんな過程を経てコーヒーを飲めるわけです。
先日、夫が一対の、コーヒーの木の鉢植えを買ってきました。
それを見たワタクシまめゆりは、心に小さなさざ波が立つのを感じました。
まあ、これは悲しい男(うちのダンナ)のロマンのお話なのですが・・・。
ン十年前のある日も、夫はブルーマウンテンのコーヒーの鉢を買ってきました。
30センチ程の丈だった鉢を何度か植え替えして、3年目でなんと1メートルほどもある大きな木になったのです。
念願のコーヒーの実も、3年目にしてようやくつきはじめました。葉陰のあちこちに緑色の丸っこい実がポツリポツリと。
実をつけてもすぐには獲らず、だんだんと赤くなってゆくのをじっくり待ってから、忘れた頃にやっと獲れるのです。「忘れた頃に」(←これが…)です。ね。
その頃のまめゆりは1歳、2歳、3歳と年子の3人を育児中。髪振り乱し戦闘の毎日を送っておりました。そしていつもの時間にいつもの部屋掃除…。いろんなものを片手でどけながらせわしく掃除機の先っぽを動かしてましたが、窓辺のレールの上を掃除したとき、何か硬いものを吸い込んだように
「ピシ、プシ、ピシピシーッ」
という音がしました。
どーせまた子供が、粘土ちぎってその辺置いたのが乾いてるんだなー、もうー!
と思うのは無理もないこと、だと思いますでしょう。
このころの夫は、帰宅するとまず2階に置いてあるコーヒーの木に直行し、何やかんやとしばらく世話をしてから降りてくる、という毎日。子供より可愛いいのでは?と思うほど大事に育てていたのです。
ところがその日は2階へ行った、と思ったらすぐにドドドッと降りてきました。
そして私にこう訊いたのです。
「窓のとこに干しといたコーヒーの実は?」って。
「…の? 実? って?、、、、!!」
な、なんて事を…。掃除のときのピシプシーッってあの音は、夫が3年間楽しみに楽しみに育ててやっと赤い実になった、ブルーマウンテンの実だったのです!
忘れた頃に赤くなったんだもん、忘れてたんです、すっかり。
「ひゃぁ〜 え〜〜っ!!??」
って、意味は違えどお互いに叫んでましたね、その瞬間。
「ゴメン、まだ掃除機に入ってるからすぐに出す!」と謝ったのも空しく、
「もう、いいよっ! せっかく3年も大事に育てて、もう少しってとこで、オマエは・・・。」
と、完全に打ちひしがれた様子の夫。
「ひとこと言っておいてほしかった」と、言いたいとこでしたが言える雰囲気じゃなかった。
「もう一度、実がなるように育てよう・・・」の響きも空しく、それっきりコーヒーの木を育てる気をなくしてしまったようでした。
そんな人間の心変わりを感じ取ったのか、つややかに葉を茂らせていたコーヒーの木はだんだんと勢いをなくし、その冬ついに枯れてしまいました。
後になって夫は、「自分で育てて収穫した実を焙煎してコーヒーミルで挽いて、それをサイフォンで淹れて飲むのが夢だった、男のロマンだよ」と言っていました。
以後、ワタクシには「男のロマンを解さない無粋な女」という代名詞がついてしまいました。
コーヒーミルも布で磨いて手入れして、サイフォンもいつもきれいにしてましたからねぇ。楽しみにしてたんですよね。
今思い出してもホント、あのときのがっかりした様子は可哀想でした。
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『男と女の間には暗くて深い河がある♪』
とは加藤登紀子の唄うクロの舟歌(←泣ける歌です、深〜い歌)ですが、その深い河に喜びや悲しみを映しながら、離婚の危機も乗り越えて、どうにかこうにか今日も夫婦でいる二人。
どういう風の吹き回しか、ン十年ぶりにコーヒーの木を買ってきた夫。
「男のロマン」、復活ですか? だんなはん…。
まめゆりには今でもちょっとイタイ想い出ですけどね。
今日はちょっとばかり沁みーるドジ話でございましたでしょ? え? ドジに変わりはない? クゥーッ(泣)!
今度は気をつけよう、3年後。
ムッ? ひょっとして3年後、今度はボケちゃってそれがコーヒーの実だってことすらわかんなくなってたら? まぁた吸い取っちゃうかもよ。どうしよーぉぉぉ、、、。
ぷるぷるぷるる んがんが えいゃーっ! (← 前言撤回のおまじない〜〜!! ?)
お・わ・り
