
「急だけど式場、決めたんだ…。明日ウェディングドレス、一緒に見に行ってくれる?」
それが娘からの「結婚する」という報告の“カタチ”だった。
夜、帰宅した私にあまりに唐突な頼みごと。急に決まったことなので、ドレスの下見も私の仕事と調整すると明日しか日にちは取れないという。
7年も付き合っていて、なんでそう急に来るかなぁ?
しかたなく、以前からの約束で翌日会う予定になっていた人にお断りの電話を入れ、娘に予定を合わせることにした。
翌朝、六本木のとあるレンタルドレスショップへ。
あらかじめ決めていたスタイルがあったようで、対応するアドバイザーに、
「こういうふうなのがいい。こういうのは嫌です。」とはっきり言っている。
私たちには何も言わなかったけど着々と構想は練っていたのね。
「せっかくだからこれもお召しになってみたら?」
すすめられ、取っかえ引っかえ着ているうちにだんだん迷ってしまう様子。
どれもすてきなんだもの。仕方ありません。
そろそろ付き添いの出番かなぁ・・・。
「きれいねぇ、どれもすてきだわ。でもやっぱりあなたが一番はじめに気に入ったのが一番あなたらしいと思う。」
一応くっついてきた付き添いのお役目を果たし、一着に決定。
「打掛けは?」と聞くと、
「…、着て欲しい?」
お色直しもドレスで、そして都心の真ん中のある場所で、今はやりのハウスウェディングというのをするのだそうだ。
聞くと卒倒してしまいそうなお値段なので、あまり詳しく聞かないことにした。
7年越しの恋を実らせた娘に、私はただ幸せを祈るだけ。
混みはじめた帰りの電車。 娘はケータイに目を落としている。
彼にメールを打っているのだろうか。
窓に映る横顔を見ていたらふと涙がこみあげてきた。
忙しいばかりで母親らしいことも十分とはいえない日々もあった。ごめんね。 でもしっかり育ってくれて、優しくて、私をたくさん助けてくれて・・・ほんとうにありがとう。
気づかれないように指で涙をぬぐい、
「幸せに。孫の面倒、任せてね!」と心の中でつぶやいた。 
